少子化と女性差別の構造についての質疑
社民党の田嶋陽子です。
私は昨年七月に参院選で五十万票余りを取って当選しましたけれども、私の属する社民党は人数が少ないので本会議での代表質問ができません。私は小泉さんに申し上げたいことがありまして、パートスリーまででき上がっておりますが、今日はそのパートワンを申し上げたいと思います。
ここは民主主義で成り立っている、国会はそういうところですけれども、少数者の意見が考慮されません。数の暴力といいましょうか、何かというともっと数取ってこいと言われます。私は、少数者の意見を尊敬しないようなところはやっぱり民主主義の国会とは言えないと思います。これは議員に対する人権侵害だと思います。そのことを一つ申し上げておきます。
私は、今日はたった十三分という時間です。十分でしたが、三分かち取りました。毎回こうやってかち取らなきゃいけないというのも屈辱的です。このことも考えてください。
小泉さんは、ちょっと過去をほじくり出すようで申し訳ないんですけれども、前に涙は女の武器という発言をなさいました。それに関してはいろいろ言われましたけれども、時間がたちましたので、もう一度そのことに関してどのような反省をしていらっしゃるか、ちょっと御意見をお聞かせください。
--------------------------------------------------------------------------------
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
よく昔から言われている言葉を総理が発言すると大分世間に波紋を広げるなと。やはり発言というのは慎重にしなきゃいかぬなと思っております。
--------------------------------------------------------------------------------
○田嶋陽子君
やっぱり総理は一歩時代を先んじてほしいと思います。歌舞伎も結構です、女の涙は武器もいいんですけれども、この女の涙が武器というのは、その実態は何だと思われますか。何を意味した言葉だと思われますか。
--------------------------------------------------------------------------------
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
![]() |
最近は女性は強くなりましたけれどもね。スポーツにおいても、マラソンにおいて、柔道においてもむしろ男性より女性の方が活躍しているということですが、そういう言葉が出てきた当時は、女性はか弱きものという見方があったと思います。だから、男みたいに体力とか暴力なんというのは女性はない、行使できないと。そういう中で、弱いものとして表現したのが、そういう涙は女性の武器なんだという私は表現になったものだと理解しております。それは、いろんな小説見ても、いろんな方が意見見ても、そう言っていることをつい私は頭にあったものですから、つい口にすると、やっぱり小説家とか大臣でない方が言うのと総理大臣が言うのとは受け取られ方が違うんだなということを身をもって実感、自戒いたしました。
--------------------------------------------------------------------------------
○田嶋陽子君
反省してほしいです。
これは、女性は無力で能力も財力も何もないという意味です。涙を流すことで初めて男の人を動かすことができるという、これは女性は非力でばかで悲しいという、そういうことですから、やっぱり田中さんを相手にそれを言ってはいけなかったことだと思います。大変な侮辱発言だということをもう一度反省していただきたいと思うんですね。
もう一つお伺いします。
総理は少子化対策で頭を悩ましていらっしゃるかもしれないんですが、なぜ少子化対策は進まないとお考えでしょうか。
--------------------------------------------------------------------------------
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
これは私も厚生大臣当時からいろいろ識者の意見を聞きながら自分でも考えたんですけれども、一様じゃないですね、この少子化の問題は。
特に最近は、女性が男性と同じように社会に進出してきております。女性の仕事は家事、育児という概念とは全く違って、男も女も家事も育児も仕事も分かち合うんだというのが今や当然の観念になってきましたから。そうなると、男としても、昔は、子供ができれば子供の面倒見るのは女房だよとか妻だよとか言って男は仕事へ出ていっちゃうと。ところが、最近、家事、育児だけじゃなくて仕事も女性はするようになった。女性にもう過重な負担が出てくるわけですよ。それを思うと、女性として子供を持つというのは負担と思っちゃう。これはいけないと。子供を持つのは喜びだと思うような環境を作るのが大事じゃないかと。そういう点からこの少子化問題というものも考えていかなきゃならないと私は思っております。
--------------------------------------------------------------------------------
○田嶋陽子君
驚きました。すばらしくいい答弁をしてくださったと思います。そこまで理解してくださったらあと一歩だと思うんですが、そのあと一歩がなぜできないかというと、私は、やっぱりリーダーシップ取っていらっしゃる総理に問題があるように思うんですね。
なぜかというと、本当にあと一歩なんですけれども、やっぱり総理は、うっかり涙は女の武器だと言ってしまう、どの男性も持っていらっしゃる女性は自分より下だという差別意識ですね。でも、一方で総理は、女性の大臣を五人もお作りになりました。これは歴史に残る快挙だと思うんですね。男の人の中にあるこの乖離、この溝ですね、これが私は少子化対策を進ませていない一つの原因だと思うんですね。
それというのは、少子化対策というのは、今も総理もおっしゃったように、男は外に女は内にという性別役割分担を解消しなきゃいけないわけで、性別役割分担の抜本にあるのは女性差別なんですね。
![]() |
女性差別って何かというと、フランスのフェミニストはこう言いました。女は最後の植民地であると。最後の植民地ということは、もうマカオも香港も植民地ではなくなりました。これは、国の関係では植民地はないわけですが、男と女の関係で言うと、女は男の植民地なんですね。これは如実に、そういうふうに皆さんもよくお分かりになると思います。胸に来ると思うんですが。
なぜ女が植民地化されたかというと、女は子供が産めたから。男は自分が産めない、子宮が欲しかったんですね。政治の一番最初は、男が女をどう支配するかということが政治の一番最初だったと言われています。この政治は今もって続いていまして、ちょうど黒人たちは綿摘みの労働力のために奴隷化されたのと同じように、女の人は子産みができるから、その子宮管理のために、奴隷という言葉はもうないですけれども、それでも奴隷化されてしまった。
奴隷というのは主権が持てない人たちのことですよね。労働力、資源を搾取されて、そして現に今、日本の主婦たちは大変元気で、そして皆さん大事になさっているようですが、あれはペットを大事にするのと同じで、やはり女性の労働力は、家事労働としては、経済企画庁でも出したように月二十三万円に相当する労働力が毎日毎日搾取されています。それは国連統計で見ると、やっぱり女の人の財産は、男が一〇〇なら女は一という。日本は夫婦別産制なんですけれども、この性別役割分業があるせいで女性は自分の財産ができない。それでも、均等法作っていただいたおかげで、女性が、今、総理がおっしゃったように働けるようになりましたから、女性たちはやっと自分のものを、お金を手に入れるようになったわけですね。
でも、結婚制度というのは差別の制度化であって、植民地の制度化というふうに考えてくださるとよく分かると思います。すなわち、結婚というのは、女は結婚すれば幸せだとみんなうそで言いくるめて女を不払労働に追い込んで、そして国が子宮を管理しているわけ。
今もって厚生労働省は女の子宮管理していますね。そうでしょう。女の人は自分の体を自分で管理できないんです。なぜなら、バイアグラはたった半年で皆さん使い出したでしょう。女性の低用量ピルは十年掛かっても許可下りなかったんですね、十年。審議なんかしていないですね。女の子宮は女のものなのに女が管理できない。国が今もって管理しているということは、幾ら女が強くなったって、元気になったって、肝心の女の体を女が管理していない。これはまだ女の人が植民地化されている、そういう状況なんですよね。
女性の子宮を管理する最たる場所が家庭、結婚制度なわけです。今、女性が結婚しなくなりました。子供も産まなくなりました。なぜかというと、結婚制度の中身が男と女の上下関係で、今もって、皆さんも自分の妻さんに皆さんのことを主人なんて呼ばせていませんか。主人と呼んだら、呼んでいる人は奴隷か下女か下男か何かなんですよね。召使なんですよね。それって身分制度ですよね。でも、戦後、身分制度はなくなったはずなんですが、結婚制度の中だけではその身分制度が生きている。皆さんが幾ら奥様を大事になさったって、制度そのものが結局女性を差別するような形でできている。だから、結婚した女性は名なし家なし子なしになります。
名なしというのは、今もって夫婦別姓通りません、自民党が反対しています。この夫婦別姓は、名なしというのは、昔の朝鮮でいったら、植民地化されたところでは創氏改名といって、国民は全部名前を変えなきゃいけなかったですね。植民地化された女性たちは結婚したらほとんどの人が名前変えます、九十何%。ですから、女たちは結婚制度の中の植民地制を排除したくて夫婦別姓を訴えているわけですよね。小泉さん、ですから夫婦別姓はどうしても、しかもこちらは妥協して選択的まで言っているんですから、通してほしい。
それから、名なし家なし子なし、子供は産んでいるんですが、その子供は結局だれか知らない男の名字が付いちゃうわけですね。自分の子供だって女は威張っていますが、全部それは家父長制ですから、男の名前が付いていく。
それから、名なし家なし子なし、家なしというのは、朝昼晩掃除させてもらっている家だって、掃除させてもらったからといって女の人がそれで給料もらっているわけじゃないですね。人を雇えばそれは払わなきゃいけないけれども、妻という名になればただ働きさせられている。そして、女の人はお金がないから自分の家も買えないから、家の名義は全部男性ですね、ほとんどが。今働き出した女性たちは自分名義の家も持つようになりましたけれども。
すなわち、結婚制度というのは本当に言ってしまうと植民地の制度化であって、女性はそこでは今もって、へそくりは別にして、名なし家なし子なしだというこの状況をやっぱり小泉さんに見てほしい。だから、結婚は女の幸せだなんというそういううそっぱちはもう言わないで、結婚制度を残しておきたかったら、その中で結婚制度の中の民主化を図る。そのためには、今税制度改革やりますが、これから政府やってくださいますよね、ですけれども、そのときに配偶者控除と配偶者特別控除をなくしてほしい。
なぜこれをなくすかというと、女の人も反対しています。なぜかというと、それに慣れているからですね。でも、この配偶者控除と配偶者特別控除が女性が自由に働くことを抑圧しているんですね。働けないようにしている。ちょっと踏み出すと、女性が税金を払わなきゃいけなくなるとか、会社での配偶者手当をなくすとか、そういうシステムができ上がっているんですね。女性はやっぱり自分のパンは自分で稼ぐような状況を国が作ってほしい。
![]() |
私は、小泉さんの構造改革をずっと支援してきました。私はこの構造改革大事だと思ってきたんです。近ごろ疑問があります。大いに疑問がありますから、道路公団も反対です、民営化反対の立場になっちゃいました、考えていったら。
ですけれども、この構造改革、すなわち戦後処理とも私は呼んでいますが、そのシステム改革プラス男の人と女の人の関係構造を改革しないと、私は小泉さんがこれから幾ら頑張っても社会は良くならないような気がするんですね。そして、女の人と子供の人たち、立場の弱い人たちが幸せにならないと、この国はやっぱり戦争からも足を洗えないというふうに思っているわけですね。
そして、この夫婦別姓もそうですが、あと、百三十万円の壁というのがあります。これは女性が自分で年金と健康保険の掛金を払わなくても生きていけるシステムなんですね、結婚した女性は。だから、女性は百三十万円以上働かないようにしているから女性が自立できない。やっぱり夫に頼ってしまう。そしてこの百三十万円。その健康保険の掛金と年金の掛金はだれが払うかといったら、国民全体で、働いている私たちと学生たちや母子家庭のお母さんたちが専業主婦の人たちのそういう保険金掛金と年金の掛金をみんなで払ってあげて専業主婦の人たちを養っているんですね。
専業主婦の人たちはシステムの中に入っちゃったから、個人の専業主婦が悪いわけじゃありません。これは国のシステムが女性を、男の人に働かせて、その働く男をサポートするシステムを戦後がっちり作ってきた。それが専業主婦システムであって、ここを今、小泉さんは構造改革なさるんなら、税制度の改革、年金二〇〇四年の改革のときに、このことを絶対に忘れないで女性を自立するように持っていってほしいんですね。
これがない限り、例えば十七歳の少年の殺人もなくなりません。私は学者ですから、そういうことを調べました。
--------------------------------------------------------------------------------
○委員長(佐藤泰介君)
田嶋委員、そろそろ時間です。
--------------------------------------------------------------------------------
○田嶋陽子君
必ず、十七歳の少年の殺人は幾ら法律作っても駄目です。必ず、よみがえっていくと、その家庭の中のお父さんとお母さんの関係が悪いところで発生しています。これは児童虐待もそうですね。いろんな要素はありますが……
--------------------------------------------------------------------------------
○委員長(佐藤泰介君)
田嶋委員、済みません、ちょっと時間オーバーしておりますので、おまとめください。
--------------------------------------------------------------------------------
○田嶋陽子君
そうですか。それでは、パートワン、途中ですが終わりますけれども、福田官房長官、非核原則見直しの問題は、やっぱりこれは私は恥ずかしいです。これは謝罪してほしいです。よろしくお願いします。
--------------------------------------------------------------------------------
○委員長(佐藤泰介君)
答弁されますか。
それでは、福田国務大臣、答弁をお願いして、次へ移りたいと思います。よろしくお願いします。
--------------------------------------------------------------------------------
○国務大臣(福田康夫君)
![]() |
私の発言の趣旨がどうも私の考えていないようなところで報道されているということで極めて残念でございまして、私は、何度か申し上げておりますけれども、国の安全保障の在り方につきましてはそれぞれの時代状況、国際情勢などを踏まえた国民的な議論があり得ることを述べたので、何も政府がこの政策を変更するとかいうようなことは一切言っておりません。
そういうことでございますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。