DV法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)施行後の状況に関する質疑
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○田嶋陽子君
社民党の田嶋陽子です。
最初に、厚生労働省の狩野副大臣にお伺いいたします。
婦人相談員のサポートについてですけれども、これまで婦人相談員は公務員として中立的な立場であったと思いますけれども、この配偶者暴力相談支援センターでは被害者側に立つことになります。その結果、DV加害者は、被害者を取り返すために、直接被害者をサポートする婦人相談員に対して脅迫とか嫌がらせとかストーカー行為などを、個人攻撃ですね、それをしている事実があります。このことをどのように認識していらっしゃいますでしょうか。
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○副大臣(狩野安君)
御指摘のとおり、婦人相談員は被害者からの相談に応じるなど被害者と密接な関係を持つので、被害者を追跡する加害者からの攻撃にさらされるおそれがあります。
このため、厚生労働省では、平成十三年度予算において婦人相談所の夜間警備体制の強化のため費用を計上したほか、被害者に対応した婦人相談員の氏名が加害者に知られないように、婦人相談所がDV法に基づき地方裁判所へ提出する相談記録の書面について、婦人相談員の氏名ではなく、婦人相談所長の氏名を記入する取扱いとするなど、婦人相談員の安全確保に配慮しているところです。
今後とも、婦人相談員の安全に配慮しつつ、被害者保護を推進してまいりたいと思っております。
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○田嶋陽子君
はい、ありがとうございます。
被害者保護の前面に立つことになる婦人相談員を組織を挙げて守る必要があると思うんですが、今の氏名を流出させないとか所長の名前を使うとか、そのほかにどのようなことを、方策を考えていらっしゃいますでしょうか。
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○副大臣(狩野安君)
婦人相談員など暴力の被害者の支援に従事する職員には、被害者から深刻な暴力の相談を受けるうちに自分も同様の心理状態に陥るいわゆる代理受傷や、納得のいく解決策が容易に見出せないまま今まで熱心に行ってきた業務に対して急に意欲を失うバーンアウト状態に陥りやすいとの指摘がありますので、被害者の支援には相談員自身の心身の健康が重要であることから、相談業務が相談員のメンタルヘルスに与える影響についても調査研究を行っていきたいと思っています。
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○田嶋陽子君
それでは、調査研究の段階で、まだカウンセリングを置くとかそういうことにはなっていないということですか。かなり緊急な問題だと思うんですが。
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○副大臣(狩野安君)
これからいろいろと研究をして取り組んでいきたいというふうに思っています。
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○田嶋陽子君
私の手元にある資料では、平成十一年ですけれども、それでも既にそういうストーカー行為があったりした県が十七県あるんですね。ないところは三十県。ですから、五〇%以上でそういうことが起きています。これから、DV法が施行されてからはもっと増えると思うので、緊急に対処をよろしくお願いいたします。
それから次に、警察庁に対してお伺いいたします。
警察庁は、ドメスティック・バイオレンスの加害者から個人攻撃される婦人相談員を守る必要性についてはどのような認識を持っていらっしゃいますでしょうか。
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○政府参考人(黒澤正和君)
もちろん危険に脅かされているそういうような状況はあってはならないことでございますので、事案に応じまして適切に対応してまいりたい、かように存じます。
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○田嶋陽子君
今のはちょっと不安ですね。適切に対応してとか言われても、私が駆け込んでも、何を言っているんですかそんなのとか、何か言われそうな気がして安心できないですよ。
例えば、ここには警察官職務執行法第五条にあります。「警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する場合においては、その行為を制止することができる。」とあります。
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○政府参考人(黒澤正和君)
当然、警察は、警察法、警職法に基づきまして、法の要件というのが今、先生読み上げられたところにもございますけれども、そのような要件にのっとって正に適切に対応するということでございます。
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○田嶋陽子君
適切、適切といつもおっしゃる。そこがよくわからなくて、具体的にじゃどんなふうになさいますか。私が交番に駆け込んだら、あるいは電話をしたら、そこにいるお巡りさんはどうしてくれますか。
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○政府参考人(黒澤正和君)
正にケース・バイ・ケースでございまして、例えば今、正に犯罪の被害に遭おうとしておる、それは制止をするでしょうし、そしてまた犯罪に遭った、今、正に遭ったということであれば、それは何々罪で現行犯逮捕するということもあるでしょうし、それは正に事案に応じて異なるわけでございまして、それを適切に対応してまいりたい、かように申し上げておるわけでございます。
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○田嶋陽子君
話にならないというか、不安ですよ。非常に不安です。だって、さっき、骨折した人を見たって、こんなことで訴えられるかみたいなお巡りさん、いらっしゃるわけですから、私はやっぱりきちんとした教育を徹底させていただきたいと思います。末端の末端までお巡りさんたちにこのことをよく伝えてほしいと思います。よろしくお願いします。
それから次は、被害者以外の女性の福祉についてなんですけれども、厚生労働副大臣にお伺いいたします。
一部の婦人相談所では、現在、福祉事務所の窓口に来た相談者がこういうことを言われるんですね、ドメスティック・バイオレンス被害者かそうでないですかと。もしそうでないと言うと受入れを拒否されることもある。すなわち、ちょっとここにフリップがあるんですけれども、(資料を示す)駆け込む人で、婦人相談所に駆け込む人は、夫の暴力は例えば四八%だとすると、そうでなくて、帰る場所もないとかそういう人が二〇%いるわけですけれども、その人たちも今度DV法が施行されてからはそちらの方が重んじられてしまって、そうでない人はDVではないと言うと対応してもらえないようなことも起きているという話を聞いています。それって恐ろしいことだと思うんですね。
というか、何ですか、不手際ですか何ですか、それともうまく伝わっていないといいますか、行政に。その辺の対応を、事を分けてきちんとしていただきたいと思うんですけれども。運用が間違っているといいましょうか。
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○副大臣(狩野安君)
婦人相談所は、DV法施行の前から、売春防止法に基づき、現に売春を行うおそれのある女性のほかに、配偶者からの暴力被害者や恋人からの暴力被害者などについても婦人保護事業の対象者として相談や保護を行ってきております。
ですから、厚生労働省では御指摘のような事態は承知はしておりませんけれども、婦人相談所はDV法施行以降も、恋人からの暴力被害者など、配偶者からの暴力被害者以外の者に対して従前どおり相談や保護を実施するものと考えております。今後とも、配偶者からの暴力被害者はもちろん、それ以外の相談者に対しても積極的にその保護に取り組んでいきたいと思っております。
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○田嶋陽子君
御指導のほどよろしくお願いいたします。いろんな勘違いも起きていることと思いますので、本当によろしくお願いいたします。
それから次は、先ほどから加害者のメンタルケアというものが出て、お話が出ていますけれども、私は、このことに関してはむしろ意見というか、先ほどの内閣府のお話ではもっと外国のことを勉強してからというお話もありました。それはそうだと思いますが、既に日本でも、市民団体で日本DV加害者プログラム協会とか、あるいは市民団体の日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオンとか、いろいろできています。その人たちの思想というのは、DVを振るう加害者というのは一つのアルコール中毒や何かと同じ嗜癖といいますか依存症だという発想に基づいていて、私もそんなふうに思っています。
ですから、私は内閣府の方にお願いしたいんですが、これをぜひとも、加害者はもうカウンセリングを義務づける、それをやっぱり法的措置を取らないといけないというふうにしてほしいんですね。要するに病気ですから、嗜癖というのは、依存症は。ですから、その病気を治してからということをもっと考えておく。じゃないと、その人たち、逃げちゃえば終わりですね。
それで、私の考えですけれども、というか、もう皆さんも既におっしゃっていることですけれども、この間、長野県で起きた、餓死させた、女の人を家の中に取り込んで。その男の人も、一人の女の人が逃げるとまた女の人を連れ込んでは暴力を振るって、また逃げるとまた連れ込んで最後が餓死させるような、三年掛かって緩慢なる殺害を行ったわけですよね。それを近所の人たちもみんな知っているわけです。知っているけれども通報しなかったというのは、さっきからお話に出ているように、まだ一般にそういうことは流布していなかった。だから、言ってみれば近所の人たちもある意味では加害者だったわけですね。殺される、痛いと言ってもう三年間わめいていても、それを通報しなかったという、これは重大事だと思いますから、これはもう皆さんがお願いしていらっしゃるように本当に周知してほしいということ。
もう一つは、その加害者に義務づける、病気なんだからきちんともうこれは法的措置を取って病気を治療してから外に出る。先ほどのお話ですと、生育歴に関係があると横内副大臣もおっしゃっていらっしゃいました。それを義務づけて、病気を治すという形で社会に出してほしいということをひとつお願いしたいと思います。
それからもう一つですけれども、今度は子ども、先ほどから皆さんも子どものことをおっしゃっていて、本当に私もその意見に同感なんですが、子どもは今度、母と一緒に暴力を受けるだけではなくて、子どものメンタルケアというのは非常に大事で、私は教師を三十年間近くやってきまして、大学生を見ていて思ったことは、今、恋人を殴っている子、殴られている子の話を聞きますとどういうことを言うかというと、男の子は女は殴るものだと思ったと言うんですね。なぜかと聞いたら、うちのおやじが殴っていたから。そういう男の学生は、もう一つのパターンは、絶対におれはああいうおやじのようになりたくないということを親のやったとおりにやる子と、それから女の子も、お母さんのようにはなりたくないと言いながら、気が付いたら殴られる男と一緒になっていたと。気が付いて別れて、またいつの間にか殴る男と一緒になるという、このパターンの繰り返しなんですね。
結局、子どもたちは夫婦の暴力を見ていると、それを学習して、大方が学習して繰り返していく、遺伝みたいに。メンタルの遺伝ですよね。それを阻止するためには、母親が暴力を受けて一緒に母親と逃げてきた子どものメンタルケアを徹底してやらないといけないと思うんです。そのことも私はきちんと予算を取ってやっていただきたいなということを、もうお願いしちゃいます。はい。
まだあるんです。もう一つあります。
それから、自立支援対策なんですけれども、私は厚生労働省の狩野副大臣にお聞きしたいと思いますが、自立支援対策の究極のイメージとして、女性がどうあったらいいというふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
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○副大臣(狩野安君)
自立支援のイメージということですか。ごめんなさい。
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○田嶋陽子君
恐れ入ります。済みません。
自立支援は具体的だと思うんですが、その具体策を作るに当たっては、まず被害を受けた女性たちが将来どう生きていってほしいかということを厚生労働省がきちんとイメージしていないと対策は立てられないと思うんですね。その意味で、女性がどうあってほしいとイメージされているのか、具体的に考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。
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○副大臣(狩野安君)
田嶋議員のおっしゃることは、本当に私自身もよく理解をしております。
やっぱり女性が一番精神的にも、それから自立することがとても大事なことだと思いますので、いろんな意味で婦人相談所も福祉事務所や母子相談員など関係機関と連絡しながら、就職についての相談とか、それから公営住宅への入居の仕方とか、生活保護などの受給や母子福祉資金の貸付けについての説明などを行いながら自立支援を実施していきたいと、してきておりますけれども、これからもそれを支援をしていきたいと思っております。
経済的にも、それから精神的にも自立するということをいろんな面で理解をしていただけるように私たちも努力をしていくことが一番大事なことじゃないかというふうに考えておりますので、力を入れてやっていきたいと思っております。
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○田嶋陽子君
はい、ありがとうございます。
例えば、こんな状況はどんなふうにお考えになりますか。暴力を振るう夫から逃げてきたときには、まず住民票がないという状態から再出発ですよね。生活の具体的な手段として生活保護の受給なんかが必要なわけですけれども、先ほどもお話ちょっと出ましたけれども、生活保護を受けるに当たって、関係の悪くなっている家族に、あるいは夫に扶養照会というものをするんだそうですね。要するに、福祉事務所が言うことは、その夫とか家族に対して、彼女を扶養しますかどうかとか、そういうことを尋ねるんだそうですね。それで扶養しないと家族が答えると、生活保護を受けるために一つのハードルをクリアしたという、それが被害者にとっては非常に屈辱的でストレスになると。ここまできてなおかつ扶養照会をしなきゃいけないのかどうかと私は疑問なんですが、その点はどんなふうにお考えになりますか。
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○政府参考人(岩田喜美枝君)
ちょっと直接の担当でございませんので、担当局の方とまた議論してみたいというふうに思いますけれども、やはり婦人相談所と、そういう生活保護などをお世話しているのは福祉事務所ですから、福祉事務所などが本当によく連携をして、そして適切なサービスが速やかに提供できるということが大事だというふうに思うんですね。
ですから、生活保護に依存せずに、何とか経済的に自立していかれる、そちらの方が望ましいわけですから、そのために、今言いましたような機関、それにプラスして公共職業安定所その他の関係機関がありますから、そのケースごとに自立支援を助けるためのチームを関係機関で作るぐらいの気持ちで自立支援をやるべきだというふうに思います。
それでもできない方については生活保護ということになると思いますが、その生活保護の手続をするときに、もし極めて何か不都合なことがあればそれは再検討しないといけないというふうに思いますので、今日御質問があったことについては、担当局の方とまた御相談してみたいと思います。
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○田嶋陽子君
はい、ありがとうございました……
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○会長(小野清子君)
時間。
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○田嶋陽子君
あと一つ。
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○会長(小野清子君)
田嶋陽子君。
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○田嶋陽子君
はい、ありがとうございます。
では、例えばその被害者はいろんな後遺症があるわけですね。うつ状態になっていたり対人恐怖になっていたりするわけですけれども、それでも福祉事務所の対応する人いかんだと思うんですけれども、子どもを抱えながら働けと言われてしまうという、これはうつ状態になっている人は大変ですよね、そういうような対応をしてしまうところ。それから後は、出ていってアパートを借りるんですが、保証人がいなくて断られてしまう。それから、仕事もフルタイムがほとんどない。せめて私なんかは、保証人なんかは何か、保証人いないんですよね、逃げてくるんですから。それなのに、保証人を見付けろとか保証人出せ、じゃなきゃアパートに入れないという、こういうのってもう青信号と赤信号を一緒に出しているようなもので、非常に残酷だと思うんですけれども、そういうのの対応はどんなふうになさっていらっしゃるんでしょうか。
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○政府参考人(岩田喜美枝君)
これも直接の所管でございませんで、国土交通省の方でおやりになっていると思いますが、今、母子家庭対策を検討している中でその問題がやっぱり出てきておりまして、公営住宅には優先的に母子家庭を入居させていただくようにという、こういう仕組みがありますけれども、それだけでは足りない場合に、民間のアパートなどをお借りになる場合に保証人をどうするかということについて、今そういう保証業務を行う民間の会社も活用するという道もあるそうでございますから、そういうことを活用していただくということにプラスして何が、母子家庭の住宅の安定のために何ができるかということを正に今、国土交通省で御検討されているというふうに理解しております。