第155回国会
会議名:内閣委員会

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○田嶋陽子君

 無所属の田嶋陽子です。
 私は、昨日、おととい、男女平等省とそれから男女平等政策特区を提案させていただきました。特に経済特区については、鴻池大臣からも強い御賛同をいただいて、意を強くしているところです。
 そうはいいましても、その男女平等省ができるまでの間は、福田官房長官にも坂東局長にも厚生労働省にも頑張っていただかなければいけません。今日は、福田官房長官と今の男女共同参画局始め各省庁にどういう方向で頑張っていただきたいのか質問して、意見を述べさせていただきたいと思います。
 今日は、内閣府にある総合調整機能について質問させていただくことになっていたんですけれども、実は今朝から亀井郁夫議員のお話を伺ったり、それから新聞記事を見たりして、その前にちょっといろいろお聞きしたいことが出てきましたので、今日はそのことを最初にやります。
 まず、例の、ちょっと今朝亀井さんとお話ししたんですけれども、やっぱり意見が合わないようでして、そこで私は、やっぱり亀井先生の考えていらっしゃることが世間の大方の考えかなとも思いますので、それに対して異論を唱えたいと思います。聞いてください。


 亀井議員は、「ラブ&ボディBOOK」というこれを、厚生労働省の団体である、どこでしたっけ、冊子を作って配ったんですね。それに対して、これを絶版にせよという意見があります。この本というのは、この冊子は、異性とどのように付き合ったらよいのか、望まない妊娠を避けるためのコンドームやピルの紹介、それから性感染症にはどのようなものがあるのかなどについて詳しく紹介しています。その詳しさがあだになったのか、なぜかこの小冊子に関しては国会議員の間でも賛否両論が入り乱れています。
 衆議院議員では、山谷えり子議員が、中学生に危険性もあるピルを勧めるのはよくないと、そういう委員会で質問もなさって、回収を強硬に主張されています。質問主意書でも、中学生に危険なピルを勧める悪い本であるといって主張なさっていらっしゃいます。ここにいらっしゃる亀井議員も、八月三十一日の朝日新聞で、やはりこの本はいかがなものかと。「ラブ&ボディBOOK」はいかがなものか、産む、産まないを決めるのは女性本人であると言っているということは堕胎を勧めていることにもなると、今朝もこの本を批判なさっていらっしゃいます。どうもこのお二方の主張は、中学生にピルの使用を教えたり、それからコンドームの着け方まで教えるのは早過ぎるんじゃないかということだろうと思います。
 でも、一方では、民主党の女性議員が最近の朝日新聞で、小宮山さんが、是非この本は絶版にしないでほしいと言っていらっしゃいます。私も、この本は是非絶版にしないでほしいと思います。もし私が中学生のころにこのような本ができていたら人生変わっていたと思いますね、マッチベターに。
 例えば、私が中学生のころなんかは、足首の細い女はいいとか、それから男は千人斬りが男らしいとか、女は逆に、何しちゃいけない、これしちゃいけないって。そして、女性の中には、いろんな社会事情、家庭事情もあったんでしょうが、お兄さんとかお父さんにいたずらされて、その結果、今みたいにこういうケアがなかったものですから、結局は、性虐待という言葉ですね、今で言えば、そういう行為を受けて、女の子は自分が悪かったんだと自殺して悪い評判になったり、かわいそうな女の子たちがいました。
 それに対して、こういう本があったとしたら、「ラブ&ボディBOOK」ですね、どんなにか子供たちは救われると、私は自分が子供だったころを思い出して思うんですね。
 例えば、亀井先生はいろいろ気になさるところだけを挙げていらっしゃると思うんですが、私なんかはとてもいいと思うところはどういうことかといいますと、さっきの千人斬りのところでいきますと、男の子でも、初体験をしなきゃいけない、早くしなきゃいけないってせっつかれている、それも先輩の男の子たちから言われて。でも、そんな必要はないんだよと、みんなそれぞれなんだよと。そういうことにだけ気を遣っている子供というのは、学校がつまらないとか、親とうまくいかないとか、自分を受け入れる人がいないとか、もっと人に認められたいとか、何かほかの原因があるかもしれないんだから、ただそのことだけをうのみにしちゃいけないよとか。

 それから、例えばこういうこともあります。女性で援助交際している子たちが何十%かいますね。そういう子たちに対しても、やっぱりこれは性犯罪なんだということ。そして、そういうことをやるのは性犯罪であってよくないんだけれども、でも、それにはまっちゃっているあなたはそうせざるを得ない心の痛みがあるんじゃないか。だから、はまるのはSOSなんだから、何があなたを苦しめているのか。その正体を少しでも知るためには、気持ちを聞いてくれる学校の先生とか、あるいはあのカウンセリングの先生に相談した方がいいよとか、こういうことというのは私たちのころは全然言ってもらえなかったですよね。
 それから、ここには、男の子が毛深いとか、いろんなペニスがどうたらこうたらとか、昔ながらのにきびの話も、いろいろ悩みがありますね。女の子だったら、ぺったんこの胸がどうたらこうたらとか、そういうものに対してもきちんと答えてくれている。私らのころはそんなこと答えてくれなくて、あなたは生きている価値もないんだよみたいな、そういう言われ方をしたものです。
 それから、ここでマスターベーションに夢中になる男の子の話もあります。別に、マスターベーションたくさんしたからって頭悪くはなるわけじゃないんだよと。自分のペースでちゃんと考えてやりなさいと。
 ちょっと私の言い方は乱暴ですけれども、もっと丁寧に分かりやすくそういうことをいろいろ書いてあるんですね。性器の形や色のこともです。
 これは、もう本当に思春期のころというのは、皆さんも思い出してみてください、非常に不安なものだと思うんですね。ですけれども、これを実行するためには、例えば、ここにこういう言葉があります。この本の中に、男の子と女の子に向かって言うメッセージが違います。例えばこういうメッセージがあります。女の子はノーを言おうということですね。
 私たちのころは、男の人にノーを言うと男の人に嫌われるからノーと言っちゃいけないという、みんな暗黙の了解でそういうものがありました。だから、うまくうまくしなを作って逃げるとか、けんかしちゃいけないんですね。
 だけれども、女の人はちゃんと自分がどうしたいか主体性を持つことが大事だと。自分の体と人生は自分で守らなくちゃいけないんだよって。自分で決めていく権利があなたにはあるんだよって。もうそういう練習を中学生のときからさせようとしているんですね。いきなり大人になってから大人になれなんて無理なんですね。だから、やっぱり中学生のときからそういうことを言ってほしい。
 じゃ、男の子に何と言っているかというと、本当の男の人というのは、女性を対等のパートナーとして認められる力量のある人、尊重できる男の人、これが本当の男なんだって。だから、男の人は、おれは男だなんて強がっていないで、もっと自分らしく生きていようよと、こういうことを言っているんですね。
 女の人にはノーと言おうよというんですけれども、このノーと言うというのは、石原慎太郎さんも「「NO」と言える日本」なんという本を書いていますけれども、男と女の関係というのはちょっとアメリカと日本の関係に似ているんですね、ちょっと語弊があるかもしれませんが。結構お互いに利用し合っていながら、いざとなるとノーと言えないのがアメリカに対する日本と同じで、男と女の関係でも、いざとなると女の人は男にノーと言えない状況があるんですね。それは、弱いからでなくて、そういう状況があるということを私は言いたいわけです。特に中学生のセックスの場合、大人になっても女の人は実はノーと言えない状況があると。

 そこで、皆様にお配りしたこれを見てほしいんです。男らしさ女らしさの一枚の表をお配りしましたけれども、ちょっとこれを見てください。左側から見てください。
 男らしさと女らしさを上下に書いてあります。女らしさを上に持っていきたいところですが、どうしてもこの表はこうでなくてはいけないんですね。まず、男らしさのプラスイメージを見てください。男の人というのは子供のころから、今はちょっと違っていると思いますが、少なくともここにいらっしゃる方たちはどういうふうに男らしさというものをしつけられたというと、男はでかい夢を持てよ、野望を持てよ。そして、男は沈着冷静でなくちゃいけないぞ。そして、男は自分で考えて、決断力、実行する、大胆に実行するんだよ、行動するんだよ。そして、社会のリーダーシップ握って、経済性身に付けて、そして強くなったら男というのは優しくなるんだよ、社会性もできてくるんだよ、包容力もできるんだよ。そして、おれに任せておけと、これが男ですよね。そういう男の人は、りりしくて、たくましくて、めったに泣かなくて、視野が広くて、そして私たちは、そういう男の人に女はみんなあこがれるわけです。おれに付いてこいなんて言わなくたって、こういう男の人がいたら、私たちはみんな吸い寄せられるように付いていってしまう。
 そして、それで男の人たちも、結構これって男らしさの理想のイメージですからストレスなんですね。その結果どうするかというと、会社や国会でいい顔をしても、うちに帰ると結構暴力振るっちゃったりする男の人がいる。身勝手で、威張っていて、そして戦争好きで、嫉妬深くて、そういう男の人は結構奥さんには暴力を振るっちゃったり、子供に暴力を振るっちゃったり、横柄だし、乱暴だし、そういうことですよね。ワンマンで、頑固で、どなって、乱暴でと。これが言ってみれば、一生懸命男らしさを生きている男の人の言ってみれば裏ですね、ストレスですね。これが事件を引き起こすものです。だから、男らしく生きよう生きようとしている人は逆にこういうストレスがたまっている人もいる、もちろんそうでない人もほとんどかもしれませんが。
 じゃ、ちょっと女らしさの方を見てください。女らしさというのは、らしさです。男もらしさですから本物ではないということです。らしさというのは社会規範なんですね。だれかが作ったものなんです。文化の操作なんですね。
 女らしさ、左側から見てください。男の人たちが、ある年代層の男たちが好きな女、従順、おとなしい、そのくせしんが強い。家事は何言ったってきちんとやってくれる。料理がうまい。忍耐、しかも控え目で、素直で、料理はできる、洗濯は黙っていてもやる、それからお茶と言えば給茶器のようにお茶も出てくる。明るい、蛍光灯じゃないんだから女にだけ明るさを求めるなと私は言うんですけれども。でも、女は愛きょうがあって、しかもきれいでなくちゃいけない。気配りがあって、きゃしゃで、美しくて、優しくて、上品で。洗濯して手が荒れているのに、料理して手が荒れるのに、手は白魚のような手を求められる、これが女です。
 この女らしさというのは、上の男らしさと比べてみてください、価値は同じではないんです。男らしさというのは、これは一人前の人格を持った人間になる素質です。自分で考えて、行動して、何かをなす。すなわち、自立して、独立して、一人前になる人間の資質なんですね。だけれども、女らしさを見てください。しんが強いとか、優しいとか、控え目とか、従順と、ここには人格になる要素は何もないんですね。ないんです。言ってみれば、人の世話をして、だれかからいい人ねと便利がられる素質なんですね。
 すなわち、これは女は女にしかなれない、人間になれない。だから、女の人には不定愁訴が多い。こうやって女の人は一人の、もしかしたら、さっき、今朝、亀井議員は男らしい女の人もいるとおっしゃいました。ここにいる例えば女性議員を見てください、あるいは官僚の方たち見てください。それぞれ仕事を持っている女性たちはみんなこの男らしさを持っています。自分で考え、決断し、行動する。これを悪口を言って男勝りだとか言いますが、私ら人間ですから、こういうものをみんな持っています。みんな持っているんだけれども、もし女らしく生きろと言われて、この下の部分だけを生きさせられた女たちはみんな病気になっちゃうんですね。だから、実に女の人の病気は神経症とか何かは非常に多いです。働いている女の人の方が少ないですね、家庭の主婦よりは。これは統計で出ています。
 そうやって健全な人間性を抑圧された女性の、右側見てください、これが自己主張できない女性はふて腐れたり、すねたりします。ふて腐れたり、すねたりする女性は男性から見るとかわいいかもしれませんが、これは自分を生きていない女性です。そして、ヒステリーだったり、暴力を振るったり、社会性がないのはそうですよね、持っちゃいけないんですから。浅はかですし、女は意地悪です。みんなどこか意地悪というのは健全な人間性をある意味で抑圧されているからですよね。すなわち、女の人は女らしさを生きると自己主張がない。すなわち、自分がないわけですから、人間になれないわけですから、人格が作りにくいわけですから、ノーが言えないんですよね。
 そして、このプラスイメージの男らしさを持っている人とプラスイメージの女らしさを持っている人が一緒になったら、必ず女らしさを生きている人は男らしさを生きている人に支配されちゃうんです。だから、おれに付いてこいなんて言われなくたって、男らしさを、この社会規範を生きている男の人は嫌でも女の人が付いてきてくれるんですね。こういう構造になっています。これが、悪いですけれども、この言葉嫌いでしょうが、男社会が作った男と女の在り方。ですから、らしさなんですね。あくまでもらしさです。
 そして、男らしさと女らしさは同じ価値ではありません。これは上下関係です。ですから、ボーボワールが、男を生きた人は、男は一級市民、女は二級市民と言ったのはこのことなんですね。すなわち、男は作られる、女は作られるというのは、このらしさで、こうやって生まれたときから作られていくわけです。私らはみんなこれに苦しんできました。

 そして、何で、じゃこの「ラブ&ボディ」の本の中で、男の子に対するメッセージと女の子に対するメッセージが違うのかといえば、こういう背景があるからですね。すなわち、女の子はノーが言えないような、そういう育てられ方をしてしまっている。男は、大きく大きく象さんになれ、昔、テレビ番組にあったそうです。女は小さく、女はそう言っていないです。大きく大きく象さんになれ、小さく小さくアリさんになれ。それを私は言葉を当てはめると、大きく大きく男は象さんになって、女はアリさんになる。すると、アリンコになった女は、象に踏み付けられたって、象はアリンコを踏み付けてもへでもないですね。もうごろっともしないですね。そうやって、ある意味では、女の人たちは男の人たちに日常的に踏み付けられる状況にいる。それが男らしさと女らしさの社会規範であり、その背後にあるのは支配という構造なんですね。
 これを見てほしいです。そして、何でこの「ラブ&ボディ」が大事かといえば、私が今申し上げたように、あからさまなことは言っていないけれども、そのことを踏まえた上で、女の人がノーと言えるということ、あるいは男の人と話し合って、避妊を決めたり、あるいはセックスするか決める、そのことがどんなにか大事か、それを中学生のころからきちんと練習していかなくてはいけない、そういう考えですね。
 でも、今朝、亀井先生からお伺いしたお話だと、今もって女は見ざる言わざる聞かざるがいいと。要するに、子供というのは大の大人から見ると、女子供は守ってやればいいんだと。すなわち、見ないでいい、聞かないでいい、知らないでいい。すなわち、子供と女に対してだけはまだこの国は封建制度なんですね。見ざる言わざる聞かざるを子供と女はやっていれ、それに対して私たちは、いや違うんだよ、だから男女共同参画社会にしてほしいと。
 すなわち、この世の中に抑圧された人たちがたくさんいればいるほど社会は不穏になるんですね。ですから、むしろみんながセックスをやって楽しければ、それで男の人も女の人も幸せなら、むしろその方が犯罪が増えるよりはいいわけです。ただし、ほっておけば男の人が勝手にしてしまうから、女の人が少し自立、しっかり自立心を持ってノーが言えるようになれば、そこに事件性は少なくなってくるわけですよね。だから子供にもきちんと情報を与える。


 そして、今一番増えているのは感染症です。性病です。十代の子供たちの間に、避妊もしないでするセックス、きちんとした知識もない状態でするセックス、そのせいで非常に子供たちの間に性病が増えています。HIVのことは余り言われませんが、これも少しずつ少しずつ増えています。アジアでは、八百万人の人たちがHIVそれからエイズにかかっている人たちがいて、一日に一万五千人ずつ増えていると言われています。
 そして、日本は、私のかつての学生たちもそうでしたが、アジアに行く学生たちが非常に多いです。困ったことは、大人の男のまねをして、学生のくせして百円で買える女の人を買うということです。そういうことに対して、日本は国内できちんとした性教育をしなければいけない。その性教育を道徳教育とおっしゃっているけれども、道徳教育ではなくて、きちんと自分の体は自分で管理をする、相手を痛め付けない、相手と話し合える能力を身に付けるという、そのことが、それこそが道徳だと思うんですね。セックスするのが早いか遅いか、そういうことを決めることでもない、純潔教育を推し進めることでもない。
 例えば、こういうことを言ったら分かっていただけるかもしれません。今朝の話で面白かったのは、政務官の方が、電子商取引から予想もしなかった問題が出てきたと、こういうことをおっしゃっています。電子商取引から予想もしなかった問題が。すると今、こういう本がコンビニで売られています。こういう本には、十四歳、十五歳、十六歳の女の子がどうやってセックスをしているかということがたくさん載っています。これはいろんな統計とまた違う状況です。これを見たら、ここでやっている、国会でやっていることがいかに時代後れか。
 私たちはこの情報にきちんと向き合って、しかもばかにしたり切り捨てたりするんでなくて、この人たちがきちんとある時期もういいよと言うまでもしかしたら教えていかなきゃいけないんですね。

 例えば、十五歳で、脱処女と言っています。脱処女と言うんですね。十五歳で二八・五%、十四歳で二二・七%、十六歳で二一%。十五歳、一番多いですよね。中学三年生です。ここにある私のところの統計によれば、これは例えば東京都の幼稚園・小・中・高等学校性教育研究会が今年の一月──これはさっきスーパーで買ってきた雑誌です。これは、一月に東京都内の高校生男女総計三千六十四人を対象に実施した調査では、高校三年生に対していつ初体験をしたのかと聞いたところ、中学三年生と答えたのが男子が一二・三%。どれだけ正直か、どっちが正直か分かりませんね。こっちはもしかして頑張っちゃってうそを言っているのかもしれないし、こっちはちょっと先生の調査だからと思ってうそを言っているのかもしれない。分からないけれども、とにかくこういう数字が出ています。女子は九・一%です、中学一年生で。現在の中学三年生にじゃ初体験済みかと聞いたところ、男子の六・八%、女子の八・七%、それが経験済みと答えています。経験済みの前にはいろんな段階があるわけですよね。
 問題なのは、厚生労働省の母体保護統計では二十歳未満の人工妊娠中絶が二〇〇一年度は四万六千五百十一件です。六年連続で増加していて過去最高なんですね。二十歳未満の妊娠中絶が一三・六%を占めている。もうこうなってきたら、ただセックスをするなとかそういうことではなくてきちんとした情報を与えてやる、後は、するかどうかはあなたがきちんと決めるんだということで、ほったらかさないで徹底して一緒に話をしてあげる、そういう性教育をできる大人と先生がいなければいけないんですが、現実に学校には先生いないんですね。その話ができる先生がいないんです。
 みんな先生まで、私らなんか言われたのは、おい、おまえ足首太いな、そんなの男に嫌われるぞと、私らの先生でさえそう言いました。それから、私たちの中学校の先生はセクハラしましたね。キャンプに行って悪いことをしました。今の先生だってそういうセクハラ先生が一杯です。おまえでぶっているなとか、おまえそれじゃ男に嫌われるぞとか、とてもひどいです。そういうの一杯あるんですね。大学でもそうです。そういう中で女の子たちはとても傷付いていて、勉強どころではなくなって、男の子に好かれるためにはどうしたらいいかとか、そんな方向に行ってしまう子供もいるぐらいなんですね。
 じゃ、お母さんとお父さんはそういう教育ができるのかというと、お母さんとお父さんは絶対にそんなことは話してくれないわけですね。きちんとした性教育のできる人はほんの数%しか親ではいません。それほど親も性というものを自分なりに克服していないんですね。克服と言うとおかしいですが、自分なりにコントロールできる自分の体と心という立場で性を考えていないということですね。
 そういう日本において、やっぱり学校教育に意味があるとしたら、私はこういう副読本をきちんと配って教室で先生たちが学生ときちんと話してくれることだと思うんですね。学校が私にとっては救いだと思うんです。私も子供のころはまだ家庭よりは学校の方が救いだったし、先生のことを信じていました。ですから、これは絶対に絶版なんかしてはいけないと、私はそういうふうに思っています。
 それで、坂東眞理子男女共同参画局長にお伺いします。この本は男女共同参画の視点の目的に合致していますでしょうか、いかがでしょうか。



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○政府参考人(坂東眞理子君)

 この「ラブ&ボディBOOK」については誤解を招く表現があったというふうに指摘があったということを聞いておりますけれども、それに対してどういうふうに判断をするか、男女共同参画の視点も含めましてどう対応するかということにつきましては、この団体の所管省庁である厚生労働省の方で適切に対応していらっしゃるというふうに認識しております。



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○田嶋陽子君

 それでは、岩田喜美枝厚生労働省雇用均等・児童家庭局長にお伺いします。
 厚生労働省としては、この母子衛生研究会がどのような意図で「ラブ&ボディBOOK」を作成配付なさったと把握していらっしゃいますでしょうか。



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○政府参考人(岩田喜美枝君)

 「ラブ&ボディBOOK」は、旧厚生省の中に女性健康手帳検討委員会という検討委員会が設置されまして、その研究結果を参考にいたしまして、母子衛生研究会が独自の事業として、もちろん専門家の意見も聞かれて作成し、希望する自治体に意向を聞いた上で無料で配付をしたというふうに承知をしております。
 この冊子の内容については例えばピルの副作用についての記述がないなど各方面からの御意見もありましたので、そういう御意見も踏まえて財団としては追加資料を作成をし、また要望のある自治体に配付をしております。
 財団といたしましては、事業は今年度で終了し、この冊子を更に増刷する、更に配付をするという予定はないというふうに聞いております。



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○田嶋陽子君

 済みません、確かめたいんですけれども、財団ではもう配付する予定はない。厚生労働省はどうなさるんですか。



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○政府参考人(岩田喜美枝君)

 答弁の中でも御説明させていただいたんですが、この事業は財団の独自事業でおやりになりましたので、継続すべきであるとか中断すべきであるとか、私どもは言う立場にはないというふうに思います。
 そして、今回作成しましたものはすべて希望する自治体に配付済みでございまして、これ以上増刷するとか配付するという予定はないということでございますし、また自治体、特に教育委員会の中には、いったんは受け取ったけれども使用しないというふうに方針を決めたところも、少数ですけれどもおありのようで、そういうところは財団の方が引取りをするというふうに聞いております。
 そして、厚生労働省としてどうするかということですけれども、今、委員が言われましたように、十代の人工妊娠中絶が増えていることとか性感染症が増えているということ、そしてまた性に関する情報が非常に興味本位で、子供たちがそれに取り囲まれているという状況は、大変危機的な状況であるというふうに思っております。
 したがって、やはり二つのことを教えないといけないと思うんですね。一つは、性についての健全な意識というんでしょうか、やはり性についての規範をどう考えるかということを、我々親の世代も含めて、それもしっかり教えるべきことは教えないといけないというふうに思います。あわせて、性に関する知識、科学的な知識を具体的な避妊方法も含めて早い段階からそれは教えていくということも併せて必要ではないかというふうに思っております。
 こういう考え方に立ちまして、思春期の性の問題に家庭がどういうふうに対応したらいいんだろうか、あるいは地域社会がどういうふうに対応したらいいんだろうかということがございますので、厚生労働省としての学習の教材を早急に開発したいというふうに考えておりまして、そのための予算を財務省の方に来年度要求をしているところです。



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○田嶋陽子君


 せっかくいいものを作ったのに、確かにピルに関してはもう少し補足した方がいいと思います。ですけれども、認可されるのはバイアグラは一年で、ピルは三十八年もたって認可されたわけですね。その間に何を検討なさっていたのか。
 私はイギリス、フランスで状況を見てきましたけれども、ほとんどの女性がピルを使っています。そして、ピルの危険もきちんと告知した上で、その上で、みんな危ないと思えば分かるわけですね、お医者さんとの相談で使っているわけですから、それをやめる。それはもう大人としての本人の選択ですよね。その場合はやっぱり見ざる聞かざる言わざるじゃなくて、きちんと情報提供する。もう使っていない人はいないぐらい使っているわけで、この危険性ということはもう世界保健機構がきちんと血栓症その他のことも出しているわけですね、何%オーケーかオーケーでないか。それを何で今、日本のこの三十八年もたってやっと許可にしたのに今の時点でこんな先祖返りみたいな変なことが起きるのか。これはもう時代錯誤も甚だしいと私は思うんですね。
 中学生にピルの話なんかというんだけれども、あのピルというのは毎日の犬の散歩と、ちょっと例え悪いかもしれない、犬の散歩と同じで、もうきちんきちんきちんとやらないと駄目なんですね。だから、避妊をするということは、人の体を抑圧するということはどんなに大変かということをやっぱりもう生理が来た段階から子供たちに教えていく。その上でその手段を選ぶか選ばないか、違う手段を選ぶかどうするかというのは子供たちと先生とでしっかり考えて決めていくことだと思うんですね。
 私は、厚生労働省はせっかくこの財団がやったこれだけのいい本を、どう補てんしようと追加しようと構わないのでそれを何とかして使うと。わざわざ予算取ってこれから作ってと、また何年掛かるんでしょうか。それよりも私は、その財団を援護してきちんと話合いをして、絶版にしないで発行し続けてほしい、もう続けてやってほしいと思うんですが、いかがでしょうか。



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○政府参考人(岩田喜美枝君)

 この財団が作りました冊子は、国が補助しているわけでもなくて財団が独自の判断で作られたものでございますので、それを絶版にすべきであるとか、逆に増刷、継続使用するために国が予算を投入して作成すべきであるとかということについては、やはり政府と公益法人との関係で、適切な関係といいましょうか、適切な距離を置くということが必要ではないかというふうに思います。
 厚生労働省として、先ほど申し上げましたように、そんなに時間は掛からないというふうに思いますけれども、厚生労働省としては納得が、私どもとしてこれが最もいいというような教材を是非、様々なお立場の専門家の御意見も聞いて、早い段階で作成したいと考えております。



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○委員長(小川敏夫君)

 時間が来ていますが。



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○田嶋陽子君 来ていますか。



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